グァタパラ新聞２０２０年８月号

林良雄さんから８月号のグァタパラ新聞が届きました。グァタパラ郡でも２８人のコロナウイルス累計感染者が確認されたそうです。日系者には今のところ感染者はいないということですが、しばらくは気を抜けませんね。８月号のグァタパラ新聞の一部をブログで公開します。

グァタパラ入植者

◼️３３　相馬 国男　茨城県猿島郡岩井町　１９２７年生れ（第１陣）

　昨年（１９６２年）、皆がトバタ耕転機を入れようとした時、黒沢儀次エ門、佐伯邦夫両氏と共同して、２台のフイアット１８馬力のトラクターを購入し、其の後相馬、黒沢両氏１台ずつの個人所有となったが、機動力が物をいって、雑作地の新墾畑で玉蜀黍を作り、１６０俵の収穫をあげたのはこの人だけ。今年（１９６３年）の乾季作はやらず、確実と思われる稲作を重点に、黒沢儀次エ門氏と共同して９ロッテを耕作する外、余力で青年達の共同耕地１０アルケールを開墾し、耕作させようとしている。甥の栗原桂一郎君のために、１ロッテ、山形・鈴木正文氏の低地を借りて開墾し、耕作させようとしている。なお、最近は、黒沢氏と共同で自走式のコンバインを２,７００コントで購入した。家庭的には、三男ベルナルド明彦君が２月１７日に出生でグァタパラ生れ第四番目、御本人は、ただ平凡にやって来ただけだと言っているが、非常に計画的で、農機具の整備に思い切った充実をはかっている。

【入植１０年】

　所有面積は宅地３ha、柑橘１４ha、低地９ha計２６haで現在低地９haに米作のほかに丘地に大豆２ha、玉蜀黍９ha、パイナップル１５,０００本、柑橘０,５haを作り入植以来堅実な経営を続け安定している。ただ、てい子夫人を数年前脳溢血で亡くしたが、間もなく佐賀から現夫人を迎えて家庭は円満にその後三児が生まれ、長女裕美子さん（１９歳）は最近島根、上田嘉一氏の養子公平君と地区内結婚して上田家に入った。

◼️３４　黒沢 典（允晴）　茨城県東茨城郡 内原町有賀　１９２８年生れ（第１陣）

＊果樹栽培農家の７人兄妹の長男。 先祖姓を二階堂と名乗り、須賀川城を居城とした。戦国大名として台頭するのは１２代目二階堂行続、１３代目為氏の時代で約５万７千石を領有。この須賀川城の築城主が二階堂行続で築城年が１３９９年であり、廃城が１６２７年。その城跡は現在の福島県須賀川市諏訪町。その後、子孫の一人が旧領地であった茨城県久慈郡黒沢村（１８８９年町村制施行により黒沢村誕生）へ、これより地名を姓とし、さらに大正２（１９１３）年東茨城郡内原町有賀に移り住む。＊

　ポンカン騒動の指導者で物議を起したが、真面目で理論的、昨年（１９６２年）何も手を出さず、養鶏資金を借りて鶏舎を造ったが雛を入れず、惰農ではないかと疑われたが、今年（１９６３年）は宅地に揚水、牛糞を入れてピーマン５,０００本などを作り、霜害から免れたことが物をいって、蔬菜では最高となる規模で、既に６５０箱を出し、これから４００箱は出ようという。御本人自身も、「昨年はどうかと思って懐疑的であったが、最近ブラジル農業の面白さが解って来た」と意気軒昂である。現地出生第一号のアルベルト洋二君の名は、太平洋、大西洋を渡って来たのにちなんだとか、ただ農機具の整備が出来ないので、県拓連に援護資金の融資を求めている。

【入植１０年】

　昨年４月両親が来伯しての感想は、私らが移住しない方が良かったのではないかと言っていた。子供４人で来伯したが、こちらで５人生れて９人となっている。日本に居た時から果樹をやる計画で来たので、入植２年目にポンカンをやる積りで苗を作っていたところ、接穂を外部から持ち込んだ場合、病気を持ち込むという理由で外部からの導入が禁じられ、いわゆるポンカン騒動となって、私ほか３名がコチアから除名となり、私の苗は抜根、焼却を命ぜられ定植出来なかった。アバカシ（パイナップル）も計画したが、実行は認められず、全事に手かせ足かせをはめられて、すっかり嫌気がさし、以来絶えず脱耕を考えて来た。自由を求めて果樹地帯に行きたいと思ったが果さなかった。 入植初期の蔬菜にピーマン、西瓜、茄子、オクラをつくり、馬鈴薯、落花生なども作ってきた。米は最高５００俵位をとった。豚も多い時は５０頭位いた。

◼️３５　松崎 松夫　茨城県那珂郡那珂町 　１９１９年生れ（第６陣）

　昨年（１９６２年）７月１９日第６陣として入植。当時一戸孤立した淋しい宅地であったが、今は賑やかとなり、水路沿いで水利に恵まれている。耕転機を持参したが、更にフォード２７馬力の中古トラクターを付属品付６３０コントで購入している。昨年は低地に５haに稲を作り、１８０俵の収穫に止まったが、今年は４ロッテ（１２ha）に稲作の計画。

　昭和２（１９２７）年、父に伴われ北海道移住。１２年帰郷し県庁につとめ、大東亜戦争中は海軍の要員、終戦後茨城県菅谷慶塚開拓組合に入植、後県の勧めでグァタパラ移住を志した。

　入植２年目から養鶏を始め、肉鶏６,０００羽を飼育したこともあったが、雛の病気が多発して損害をうけ負債が重圧となっている。４年目から稲作に力を注ぎ、毎年３０haを耕作、現在鶏は７００羽に縮小、用地としては低地３０ha、宅地３ha、雑作地１２haを申し込んでいる。

　１０周年の感想は「他の古い移住地に倣ってゆくのはどうだろうか。グァタパラ入植者は組織病にかかっているのではないか。組織より先に自分の経営形態を確立するべきである。｣

◼️３６　高木 治三郎　城県新治郡八郷町　１９１６年生れ（第１０陣）

＊氏の生地は茨城県行方郡潮来築地(元津知村)、農家の四人兄弟の三男。

友部の国民高等学校に入校（加藤完治校長は内原中央訓練所々長も兼ねた）２ヶ年を経て卒業。加藤校長に勧められ、昭和７（１９３２）年満州開拓第一次の弥栄いやさか開拓地・所在地・吉林省佳木斯永豊鎮に入植。この入植者等は農業を営みながら国境を守備する武装農民であった。

　また、加藤校長の紹介で妻帯。しかし、満州において妻子を亡くす。

帰郷後、茨城県新治郡八郷町中山開拓地に入植する。この開拓地へ満州開拓弥栄の同地だった引揚者の鈴木氏等も入植された。

　入植５年後、母親と姉妹の３人で引揚げ同船であったつやさん（旧姓・赤塚）と結婚する。この開拓地で陸稲、４５〜６０度の筑波山急傾斜地では重みのある収穫物は運搬が負担であり、西瓜、南瓜、ごぼう，人参等の種子取り栽培を手掛けた。

　折しも、３７戸入植したこの地域に電気、水道導入交渉で、何度も県庁に足を運ぶ頃、県側からグァタパラ入植話しが出され長男等も乗り気になり、１９６２年８月に話を聞き、同年１２月横浜港を出航となる。＊

　グァタパラ入植以来有賀、鈴木氏と３戸共同で、井戸掘り、簡易水道、建築、蔬菜の潅水栽培と、協同一致して熱心に経営を進め、ピーマンも順調に生育していたが、感情の疎隔が原因か協同解消して一切を有賀氏に任せ、各自別に井戸を掘る。

【入植１０年】

　低地営農に取り組んで来た一人で、裏作のメロン栽培に降霜を防ぐ為徹夜で火を燃やしたことや、水稲に潅水の為長い水路を一人で清掃作業を続けて用水確保を計ったものである。交換分合でも低地中心経営の考えを棄て難く、低地４、宅地３、雑作１、計５地区２５,５haを希望しており、現在水稲１１haを耕作している。昨年はイセキ・コンバインとクボタ田植機を導入して水田の機械化を計り、低地整備も進んで１１haの機械田植を行なった。第１回目は０,４haに日本米を機械田植で行い、１２月末収穫、精米２１,５俵を得て一俵２４０コント（約１２,０００円）で販売した。将来は宅地と雑作地に柑橘を植えたいと語っていた。

◼️３７　石崎 耕三　茨城県真壁郡下館市中館　１９０９年生れ（第１０陣）

　鈴木栄太郎氏と共に満州開拓第一次の弥栄の出身で、共にまた熱心な創価学会員。宅地は旧煉瓦工場跡で組合所有の建物も残っているが、水利に恵まれているので希望して入り、努力して整地する。稼動力５人の優秀な家族構成で、妻ツメ、長男豊君（２８歳）はギターに巧みで、青年有志に乞われて同好者１３人に教えている。次男実君（２４歳）も青年会で活躍、後年リベロン市で仕立屋を営み、長女静子さん（２４歳）、次女二三子さん（２２歳）は交替で本部食堂の切盛りをしている。三男正夫（１９５０年生）、二三子さんは青森県出身の開発青年隊第６期生の鎌田敏夫氏と結婚する。

【入植１０年】

営農は長男豊君夫妻が中心で、宅地の野菜栽培に主力を傾けている。入植初期には蜜蜂なども取り入れる。日本で飼育経験済み。今年は低地一地区を開墾、水田に造成、田植方式で集約栽培を行っている。交換分合で柑橘地区を放棄して、その代りに宅地二地区、低地、雑作地を各一地区ずつ求め、将来は宅地一地区に永年作物を、雑作地には柑橘を栽培したいと言っている。

　氏は昭和７（１９３２）年に第一弥栄開拓団に入植、満州生活１３年半、引揚後は日本で開拓地に入植したが、三転してグァタパラ入植した者で、その開拓体験談は傾聴すべき事柄が多い。１０周年の感想は、満州生活の体験から考えてもブラジルほど気候、風土の恵まれた良いところは世界広くても少ないと思う。

＊後年ヴァリニャ方面へ移転される。＊

◼️３８　鈴木 栄太郎　茨城県新治郡八郷町　１９０６年生れ（第１０陣）

　石崎氏と共に入植、指圧療法で入植者家族の病人を何名となく治療して快復させ、喜ばれている。共同の解消で今まで無収入。

　子息：正 渡伯当時元気であった父親が１９７２年死亡。現在正氏が結婚し農業を継いでいる。父親は指圧療法の特技があり、生前は患者の来訪が多く、家庭で治療したり、定期的に地方都市に出張して施療に当り多くの人々から感謝されていた。交換分合で宅地一、低地二、雑作地三地区計２５,５haを求め、現在は営農も未だ軌道に乗っていないが、水稲３ha、雑作６haを開墾、緑肥として大豆を播いているが、将来は桑園を育成して養蚕を行いたいと言っている。

◼️３９　有賀 康久　茨城県新治郡八郷町 　１９３０年生れ（第１０陣）

　器用大工で農閑期には方々の建築手伝いに出た。共同で蔬菜を始めるが、共同を解消。折角同じ八郷の開拓団から揃って来ながらシックリしないことは惜しまれる。

　入植当初は稲作、ピーマン、玉蜀黍栽培等いろいろ試みたが思うようでなく、賃稼ぎ大工をして蚕室、鶏舎などの建築を手掛けておったが、７年前宅地と低地（４ha）を桑園に育成して養蚕を始めた。その後交換分合により全拓連農場の向い隣りに土地を求め、現在の所有面積４０ha、１１,５haの桑園を育成し、養蚕専業で年間収繭量３,５００kgを目標としている。将来は桑園を順次育成しながら間作に柑橘、アバカテを植え付け、果樹園として農場を完成したいと語る。

◼️４０　岡田 昭三郎　茨城県行方郡北浦村　１９２８年生れ（第１１陣）

　入植宅地が幹線用水路沿いなので揚水して蔬菜作りを始める。世帯主は昭三郎氏であるが、父敬三氏夫妻や弟二人と大家族で稼動力も多く、末弟澄夫君（１５歳）は小学校へ通学中であるが、野球が上手でグァタパラ野球団の正補手。

　たまたまグァタパラ移住の募集が県からあり、｢岡田さんが出ればあとに続く人が多かろう」と言う県の覗（うかがい）で移住を推進され一家１１人で渡伯した。父敬三氏は当時５６歳で家長の資格がないため長男の昭三郎氏（当時３４歳）を家長とし、父母、昭三郎氏の家族６人と弟妹３人計１１人であった。

＊清子夫人との初対面は、当時の鉾田町北浦病院で幼時の四女浩子さんを伴って脱臼診察に通院していた時だった。大洋村吾妻原開拓と岡田氏の北浦武田開拓地は隣村であり、茨城出身の方では至近距離の家族でもあった。＊

　しかし、この１０年間に大きく変化があった。昭三郎氏夫人清子さん（当時２９歳）は入植の翌年出産後の容態悪化病院に赴く途中で死亡、出産した長男（現９歳）は祖母の手で育ち現在小学校三年生。四人の娘（１８、１６，１４，１２歳）は家事の手伝中で昭三郎氏は以来再婚せず、弟稔氏（３５歳）はコチア組合のグァタパラ倉庫に勤務、長野出身の雫田勝氏の娘と結婚し三児がある。妹恵美子さん（３０歳）は渡伯の船中で知り合った男性（吉田）と結婚し、現在サンパウロ近郊で家具商を営んでいる。末弟澄夫氏（２４歳）はサンパウロの書籍商に勤務の傍らＡ級野球チームの選手として活躍している。 後年聖市に移転する。

◼️４１　岸田 良夫　茨城県那珂郡大宮町　１９１４年生れ（第１４陣）

　今年（１９６３年）６月１３日入植、８月２５日自宅に引越した。第五区の区長に選ばれて組合役員となり、低地稲作を一ロッテだけにして、その代り誰にも負けない綺麗な畑にするべく、労働者２名を入れて手蒔で３haを２日がかりで蒔付、耕転機を携行して来ているので馬はおらず、内地で１町３反を手開墾したことを思えば極楽だと言っている。

　広い土地で農業を行いたくグァタパラに入植。当初稲作、柑橘栽培、養豚等をやったが儲かったものはなかった。一昨年（１９７１年）から養蚕を始め、昨年（１９７２年）１月から掃立て、今年度（１９７３年）では７回３００g掃立て１,２００kgの収繭を得た。現在桑園６ha、土地は３６haとってあるので将来養蚕を伸ばす予定で、本年度は７８０g掃立、３,３００kg収繭の計画で年２万コントの収入をあげるのも不可能ではないとしている。｢１０年間随分無駄骨をおったが方針は確立した。宅地の柑橘はアムリン種で駄目だとされていたが、今年（１９７３年）は８０本で１,５００コントに売れた。将来永年作物も栽培して行きたいと思う｣。

＊日本の開拓地は那珂中部開拓農協。＊

◼️４２　設楽 十五　茨城県友部町　１９２６年生れ（第１７陣）

＊氏の生地は山形県西村山郡西川町睦合。＊

　１９６３年９月１０日入植、１０月２４日建築を終って新居に引越した。住宅は規格より３ｍ大きく、更に２ｍ下屋を出し、内部も、室内に水槽タンクを上げ、持参したビニール管で台所、風呂への配管も至り尽くせりで、旧入植者に見られない周到さである。

　グァタパラに入植後当初は低地営農に努力したが、条件が悪いので養豚を主体とした。ところが、１９６８年コチアから配給の飼料に毒物が混入していて６３頭が一度に死亡した。しかし原因はウヤムヤにされ、何の損害賠償も得られなかったので、それを契機にコチアから脱退した。また翌６９年には豚の出荷先リベロン市の加工業者に不渡小切手を出され、自分が養豚組合の役員として他の組合員の分まで責任をとって支払い、加工業者からは年賦払をうけつつある。１９７０年に将来を見越して柑橘用地に宅地を移転し、一昨年から養豚のほか養蚕を始め、１９７２農年には豚１３,０００kg、繭２,６００kg出荷し経営は安定、用地は保留地の宅地を中心に２０ha以上をまとめて取得している。朴訥（ぼくとつ）な農魂に徹した開拓者である。

＊後年サン・カーロス市に移転する。

◼️４３　設楽 昭五　茨城県友部町　１９３０年生れ（第１７陣）

＊氏の生地は山形県西村山郡西川町睦合。 昭和２０（１９４５）年、満豪開拓青少年義勇軍内原訓練所入所のため西山小学校高等科中退。敗戦を迎え２８年友部開拓に入植。＊

　十五氏の実弟で大津氏と共に友部開拓組合出身。茨城出身者は大部分が開拓体験者である。１９６３年１０月２７日に新住宅に引越。

　１１人兄弟の末弟。愛知県、三重県等の農家等で農業実習、研修後友部に入植した。１０年間試練のあとグァタパラ入植。珍しい文化人で現在まで引続きＮＨＫの編成、技術、記録の三モニターを兼ね毎朝日本の放送を聞いて通報、助言している。経営成績も抜群で、入植翌年から養鶏に着手し、現在成鶏８,０００羽、雛１,２００羽を飼育している。一貫して養鶏を継続する。

◼️４４　大津 敏　城県友部町 　１９３１年生れ（第１７陣）

＊氏の生地は山形県東村山郡中山町。＊

　携行荷物中の１個、自転車４台を入れたのが紛失、探すとピニャール移住地に誤送されていることが判った。持参した太陽風呂も据付、工夫をこらしたものである。内地の友部では葡萄９反を作っていたものだった。

　農家の三男で、昭和２７（１９５２）年茨城県友部の開拓組合に入植した。そこで果樹栽培をやっていたが、度々雹害に遭い、これが動機で渡伯した。

　入植当初、稲作、メロンなどを栽培したが、災害に耐えるものということで４年目から養鶏を始め、現在成鶏７,０００羽、雛２,０００羽を飼育し養鶏専業である。

【編集後記】

　一晩中稼動音を高らかに響かせ、砂糖キビ収穫のコンバインが四方八方で活動している。その収穫後の翌朝、刈りあと地にイノシシの成頭６頭と９頭のうり坊（体のしま模様が縞瓜によく似てるから、こう呼ばれる）が出没。しかし、子ずれ親イノシシは大変凶暴であるので接近できず、このしま模様を確認できなかった。だがその後、３日続けて猟銃音が１０数回鳴り響き、３日目は猟犬約１０頭を引き連れて狩を続けている。 グァタパラ郵便局が伯銀の代行をしていたが、これが６月中旬から中止になってしまった。年金を受取ったりしていたが、これも出来なくなったので、今普及しているオン・ラインの手続にリベロンの伯銀へ行くと、入口で利用者を３５人と制限し約１時間待機、更に３０分ほど担当の窓口で待たされた。出来上がってみると、これが大変便利で携帯のスマホで出来るのである。